ざくろ色の止まり樹

いまある音楽を楽しむ。

クレイジーすぎるパフォーマンス!耳にも目にもたのしい現代音楽を集めてみた Part.2

Part score

シュールなパフォーマンスが炸裂する作品紹介の続きだよ!
前回はこちら。

まさかのバイクが演奏に参加:シュネーベル『9台のオートバイとトランペット、シンセサイザーのためのハーレー・ダビッドソン』

Dieter Schnebel: Harley-Davidson for 9 Harleys, a Trumpet and a Synthesizer (2000)

トランペットとシンセサイザーの演奏から始まる。
よくある野外演奏かな?と思っていると、そこにイカした男たちの乗るバイクが入場!
3:00あたりから、指揮者に合わせてバイクのエンジンを鳴らす「演奏者」たち。
ちゃんと楽譜をバイクにくっつけて見ているし。

実はこの曲、最初に知ったのはこっち↓の映像なのだけど、


このときは、ダルそうなメロディのトランペットとやたらノリノリのシンセサイザー、アツい服装だけどどこかぎこちない指揮者、そしてちょっと笑いそうになっているバイク奏者(とでも言うべきか)という統一性なさすぎな絵面が面白すぎて、完全にネタな曲という印象だったことを白状する!
でも先の「ちゃんとした(?)」演奏の動画だと、かっこよく見える不思議。

シュネーベルという作曲家も、カーゲルと似てパフォーマンス性の強い作品を多く作っていたようだ。
ちなみにカーゲルも、乗り物を使って野外で「演奏」させる曲を残している。
111人の自転車乗りのためのそよ風』だ。
自転車を走らせながら、ベルを鳴らしたり、口笛を吹いたり、歌ったり叫んだりする。
見かけはそよ風らしくはない。全っ然さわやかじゃない。

Kagel: Eine Brise (1996)

なんと演奏のための解説動画もあるぞ!

ヘリコプターだって演奏に参加?:シュトックハウゼン『ヘリコプター弦楽四重奏曲』

Karlheinz Stockhausen: Helicopter String Quartet (1992/93)

弦楽四重奏というと、ハイドンの時代から200年残り続けている、まさに伝統の編成。
現代でも管弦楽団と同じように、四重奏団もたくさんある。

シュトックハウゼンはアルディッティ四重奏団から弦楽四重奏曲の委嘱を受けてこの曲を書いた。
アルディッティ四重奏団とは、数々の前衛・実験作品を初演してきた精鋭の弦楽四重奏団だ。
だけどさすがの彼らも、4人それぞれがヘリコプターに乗って弾く、30分もの長さのトレモロ*1過多の作品が来るとは予想もしなかっただろうな…

シュトックハウゼンはある日、ヘリコプターに弦楽器奏者が乗って演奏し、それが四つ輪になって旋回する「奇妙な」夢を見た。

(ヘリコプター弦楽四重奏曲 - Wikipedia)

うん。夢を見ちゃったなら仕方ないね!
思いついちゃったなら仕方ない。

普通アンサンブルというのは、演奏者同士がブレスを聞いたり動作を見たりして、息を合わせあう。
だけどヘリコプターでメンバー各々がバラバラ、しかもプロペラの音で自分の音さえも聞こえないとなると、それまでやってきたアンサンブルの根本が覆されることになるよね。
代わりに、イヤホンから流れるクリック(メトロノームのように、一定の速さで打つ音)を聞いて合わせるらしい。
みんなそれぞれでクリックを聞きながら楽譜を追う、だけど4人はぴったりアンサンブルができていることになっているって、不思議な感覚だろうなぁ。

公式ページで楽譜の1ページ目が見れるのがありがたい。
綿密すぎる。そしてカラフル!
HELICOPTER String Quartet - Page 1

詳しい解説もここに。(丸投げ)
「ヘリコプター弦楽四重奏曲」ライナーノート

山下洋輔 『ピアノ炎上』

Yosuke Yamashita: Burning Piano

最後はちょっと別のジャンルだし、「楽曲作品」とは違うかもしれないけど、これこそコンセプチュアルなパフォーマンスかなと思って入れてみたよ。
ネットのどこかで一時期話題になっていた記憶があるから、知っている人も多いかもしれない。

ジャズピアニストの山下洋輔による、燃えていくピアノの演奏。
だんだん音が壊れて出なくなって、火も自分の方に近づいて行く中、ギリギリまで鍵盤を叩き続ける光景は、死ぬしかないものを必死に生き返そうとしてどうにもならなくて、でもその最期は息をのむほど美しい…そんな感覚をおぼえる。
言葉にしちゃうと、なんだか陳腐だけどね。
いろんな感情で胸が締め付けられる、不思議な演奏だなぁと思ったよ。

www.eiganokuni.com

終わりに

こうやって映像で見れるのがいいよね。何度でも聴けるし、声に出して笑っちゃってもいいし。
音楽に限らないけど、現代の芸術って自分の世界を思いっきり広げてくれる。
それはもう、いやというほどに。
自分が思ってもいなかったものが、「作品」として提示されるわけだけど、時としてそれはほんとに突拍子もなかったり、極端すぎるところから現れたりする。
このクレイジーさがたまらんのです…

*1:音を小刻みに震わせる奏法。この場合、弓を細かく行き来させて、同じ音を細かく繰り返す。長時間やるとつらい