ざくろ色の止まり樹

いまある音楽を楽しむ。

クレイジーすぎるパフォーマンス!耳にも目にもたのしい現代音楽を集めてみた Part.1

Timpani

ティンパニに頭つっこむ曲とか、オーケストラの前で卓球したあげく大量のピンポン球をぶちまける曲とか、現代音楽にはほんとやりたい放題な曲が多くてたのしい。 

この流れに便乗して、クレイジーでシュールでエキサイティングなパフォーマンスを見せてくれる現代曲を集めてみたよ!

JKが歌い狂う:リゲティ『マカーブルの秘密』

György Ligeti: Mysteries of the Macabre (1977)

オーケストラが待っている中、颯爽と現れるサイモン・ラトル
そこに突然のミニスカJKが!
今時のJKって感じのダルそうな雰囲気がすごい。ガム噛んでるし。
しかしいったん演奏が始まれば、その超人的なテクニックとエネルギーに圧倒されること間違いなし。
ちなみに服装とガムについては楽譜に指示されてるわけではありません。w

この曲は、リゲティが書いた唯一のオペラ『ル・グラン・マカーブル』から抜粋された3曲の歌が組み合わされた、オーケストラとソプラノ歌手のための作品である。
リゲティは、キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』や『シャイニング』に音楽が使われたことで有名だ。
以下の教えて!gooでの、『マカーブルの秘密』に関する説明がわかりやすかったので載せておくね。

oshiete.goo.ne.jp

ほとんど意味のない言葉の羅列でできた歌詞に、人間の声で歌わせる気が全然ないアクロバティックすぎるメロディ…
これをここまでのクオリティで歌い切るバーバラ・ハンニガンの演奏は、いつ観ても強烈だ。
しかも上の映像は、ハンニガンによる2回目の演奏なのだ。
1回目は以下で、こっちではJKじゃなくて娼婦の格好になっている。
歌いながら、なんと指揮まで!

www.amazon.co.jp

日常かと思ったら演奏だった:ジョン・ケージリビングルーム・ミュージック』

John Cage: Living Room Music (1940)

テーブルの周りで男子たちが日常シーンを繰り広げていると思ったら、何のポーズもなくそのままリズミカルな「演奏」に突入する。楽しそう。

この曲には、決まった楽器の指定がない。
その代わりに、家庭用品や家具などの「日常にあるモノ」を使うように指示されている。
たとえば雑誌、ダンボール、「大ぶりの本」、床、木枠や窓など*1から、好きなものを選べるというわけだ。
だから演奏者は何の音を使うかというところから、モノの配置やどういう動作で演奏するかなどの視覚的なセッティングまで、楽譜通りに音を出す以外の「遊べる」部分がたくさんあって、すごく面白い。
わたしはそういう、演奏者がもう一段階「創造」できる余白の大きい作品が好きなんだよね。
演奏というものが必ずしも、観客の座っているところから離れたステージの上で、専門家たちだけでやるものというわけではない、ということがこの作品から伝わってくる気がするよ。

曲の構成は、4つの短い楽章でできていて、以下のタイトルがついている。

  1. To Begin
  2. Story
  3. Melody
  4. End

最初と最後は、上に書いた「モノ」を打楽器的に使うリズミカルな楽章。
第2楽章は「声」を使って、詩が話されたり歌われたりする。
第3楽章の演奏は任意で、メンバーの一人は「適当な」楽器を使ってメロディを演奏する。

以下は別バージョン。
ごはんマダー? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

まるで大げさなピタゴラスイッチ:カーゲル『二人用オーケストラ』

Kagel: Two-Man Orchestra (1971-73) (Digest)

上の映像はダイジェスト。
フルの映像はこちらのサイトで観ることができる。1時間以上あるけどね!

Mauricio Kagel: Zwei-Mann-Orchester (Two-Man Orchestra) at Museum Tinguely, Basel | VernissageTV Art TV

カーゲルといえば、例のティンパニに頭をつっこむ『ティンパニとオーケストラのための協奏曲』で有名だ。
彼は作曲家としてだけでなく、劇作家や映像作家としても活動していた。
彼の曲に現れるおおげさなパフォーマンスは、舞台芸術としての作品づくりの一貫だったんだね。

この『Two-Man Orchestra』、タイトル通り演奏者は2人。
オーケストラなのに2人。
楽器は何を弾くのかというと…
ラクタ、部品、廃棄物から集められた楽器または道具で作られた、巨大な音響発生マシン*2

なんのこっちゃ!!

まあ上の映像を見れば、ステージ上がなんかとんでもないことになっているのは一目でわかる。
ここで使っている壊れた楽器や装置の数は、なんと200以上に及んでいるらしい。
演奏うんぬんの前にセッティングが大変すぎるわ!

そしてこの巨大なマッスィンを2人の演奏者が操作していく。
その光景はなんというかもう、カオスである。ときどきカメラも困惑してる。
次から次へと新しい芸を見せてくれる演奏者たちは、もはやまるでピエロのようだ。

正直、この曲の書かれた理由とか、カーゲルが何を考えていたかなんて全然わからないけど、単純に見て聴いてて面白いと思う。
個人的に一番好きなのは、すごい地味なんだけど37:50から小石がギターの上にボトボト落とされているシーン。
だんだん小石に埋まっていくギターの姿がちょっと切なくてシュール…けっこういい音してるし…

 

だいぶ長くなっちゃったので、次回に続きを書くよ!
またねー。

*1:Wikipediaより「Living Room Music」を参照しました。

*2:The New Music-Theatre of Mauricio Kagel」を参照しました。